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マンションの売買契約では、不動産の知識や経験の少ない買主が誤った判断をしたり、勘違いをして不利益を被らないために重要事項説明が義務付けられています。
しかし専門用語やわかりにく表現も多いため、初めて聞いた方にとって全てを理解することは簡単ではありません。分かったつもりになって売買契約を結んでしまうと、後々トラブルに発展する可能性があるので要注意です。
1. 重要事項説明書の全体像
重要事項説明書は大きく分けると、下記の3つの内容で構成されます。
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マンションの売買に限り、3の「マンション等の区分所有建物の場合に追加される事項」が重要事項説明書の内容に追加されます。
この記事では「1. 対象となる宅地又は建物に直接関係する事項」と「2. 取引条件に関する事項」については、解説していないため下記の記事をご覧頂いていない方は、先に読んで頂くことをおすすめします。
それでは以下からマンションなどの区分所有建物の場合に追加される10項目について、詳しく解説致します。
2. マンションなど区分所有建物の場合に追加される10項目
2-1. 敷地に関する権利の種類および内容
ここで注目するポイントは、敷地の権利が所有権または借地権のどちらなのかということです。所有権とは自らが所有することで、借地権とは誰かから借りていることを意味します。
マンションの敷地が所有権であれば特に問題はありませんが、もし敷地の一部などに借地権が存在する場合は地代が発生する可能性があります。
2-2. 共有部分に関する規約の定め
共有部分とはエントランスホールや廊下、エレベーター、設備の配管などのことで、占有部分(部屋など)の床面積の割合で持分が定められています。
管理規約や使用規則で、共有部分に関するルールが定められているので必ず内容を確認しましょう。たとえば設備の配管が故障した場合、占有部分の所有者が修理費を負担するのか、あるいは管理組合が修繕積立金で対応するかなどの点に注意です。
2-3. 専用部分の用途およびその他の利用の制限に関する規約等の定め
占有部分(部屋など)も同様に管理規約や使用規則でルールが定められています。
たとえば楽器の演奏やペット飼育の可否(ペット可でも大型犬は禁止など)、リフォーム工事をする場合の仕様の制限や届出についてなど、後から聞いてなかったではトラブルのもとになりますので見落としてはいけません。
2-4. 専用使用権に関する規約等の定め
専用使用権とはマンションの敷地や共有部分、付属の施設などを特定の人が独占して使用する権利のことを言います。わかりやすいもので、専用の庭やルーフバルコニー、駐車場、トランクルームなどです。
使用料やルールなどこれも管理規約や使用規則で確認を行いましょう。
2-5. 所有者が負担すべき費用を特定の者のみ減免する旨の規約等の定め
所有者が負担すべき費用とは、管理費や修繕積立金、駐車場代などのことです。特定の人にだけ減免するのはズルいと感じる方も多いと思いますが具体的にどのようなケースを解説します。
よくあるのが新築の分譲会社が管理規約で定める場合です。たとえばマンションが売れ残っている場合、本来上記の費用は所有者である分譲会社が負担しなければなりません。しかし管理規約でこの定めをしておけば、分譲会社は支払いを免れることができるのです。
では誰がその分の費用を支払うのかというと、実はマンションの各所有者が負担しなければなりません。つまり通常の費用負担にプラスして支払う必要があるということです。
2-6. 計画修繕積立金に関する事項
計画修繕積立金とは、マンションの外壁や屋上、廊下などの共有部分の維持や修繕を行う大規模改修工事に備え、各世帯から一定額を徴収し、積み立てておくお金のことです。共有部分の維持修繕などに利用される管理費とは異なります。
重要事項説明書では修繕積立金に関する管理規約がある場合、その内容や積立状況を説明する義務があります。また修繕積立金の値上げ予定、滞納状況、大規模修繕工事の予定などを確認することも大切なポイントです。
またもし売主に修繕積立金の滞納があると、買主は滞納金を引き継ぐため支払い義務が生じる点に注意です。売主に滞納金を清算してもらうか、滞納分の費用を売買代金から差し引くなどの対応を求めましょう。
修繕積立金について詳しく知りたい方は下記の記事がおすすめです。
マンションの修繕積立金は適正か?【将来負担増の目安もわかりやすく解説】
2-7. 通常の管理費用の額
修繕積立金と同様に管理費用のについて確認することも大切です。
また実際に管理がしっかり行われているかを現場で確認しましょう。たとえば共有部分の清掃は行き届いているか、集合ポストや掲示板は整理されているか、建物自体メンテナンスはされているかなどはぱっと見だけでも管理状況はわかります。
他にもマンション購入で注意する点は下記で詳しく解説しています。
中古マンション購入の注意点5選【潜在的なリスクを宅建士が解説!】
2-8. 管理組合の名称および管理の委託先
管理組合とはマンションや敷地などを管理する組織で、主に区分所有者(マンションの住人)で構成されます。理事長や役員が決められ、マンションを健全に運営していくための方針を定めていきます。
実際に管理を行うのは委託された管理会社であり、管理費や修繕積立金の中から必要に応じてマンションの修繕工事が行われます。
2-9. 建物の維持修繕の実施状況の記録
重要事項説明書では修繕工事の実施工事の記録がある場合に限り、資料が交付されます。修繕工事の履歴ではなく記録がある場合なので、記録が無ければ無しとだけ記載されます。
できれば具体的にどのような工事が行われたかを確認できるとベストです。具体的には「管理に関わる重要事項説明報告書」「管理組合の議事録」で確認ができるので、不動産会社を通して取得依頼をしましょう。
また、大規模修繕工事は8〜12年の周期で行われる場合が多く、前回の実施時期から次回の大規模修繕工事の時期を予測することもできます。ちなみに大規模修繕工事後は修繕積立金の額が値上がりすることが一般的なため、既に値上がりが決定もしくは、予定しいる場合は買主への告知が義務付けられています。
2-10. その他
この項目では、特に定めがなく他にも買主が知っておくべき重要な情報が記載されているので要注意です。
たとえば大規模修繕工事の時期、修繕積立金・管理費の値上げ案(決定含む)、臨時負担金の有無や金額など、必ず確認しなければなりません。
3. まとめ
以上マンションの売買で追加される重要事項説明書10項目について解説させて頂きました。
重要事項説明書は専門用語や分かりにくい表現も多く、初めて見た方が全てを理解することは難しいと思います。そのため事前に書類をもらって内容を全て確認・理解した上で、契約時は読み合わせ位の状況がベストです。
内容を分かったつもりになって後から取り返しのつかないトラブルに発展しないためにも、重要事項説明書の内容のしっかり理解しましょう。
また不動産売買共通の重要事項説明書の内容についてまだ読んで頂いていない方は合わせてご覧頂くことをおすすめします。
重要事項説明書の25項目をわかりやすく解説!【トラブルになりやすいポイントは?】
最後までご覧いただき、ありがとうございました。