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不動産業界には「物件の囲い込み」という自社の利益を優先して売主の利益を害する行為が存在します。
不動産の囲い込みは実態をつかむことが難しく、被害に会うと売却活動は難航する可能性が高いです。
この記事では、現役の宅建士が、不動産の囲い込みをされると具体的にどんな影響があるか、また被害に合わないための対処法を解説しています。
結論、不動産の囲い込みの被害に会わないためには下記の方法が有効です。
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Contents |
1. 物件の囲い込みとは
「物件の囲い込み」とは専任媒介契約を結んだ不動産会社が売り物件情報を他社に契約させない行為のことを言います。
本来、専任媒介契約はレインズへの登録が義務なので、他社も対象の物件を自らの顧客に紹介して良いはずです。
しかし、対象物件の照会の連絡をすると「すでに予約が入っている」「契約予定」または「担当者不在」といった理由で紹介をさせてもらうことができない場合があります。
実際は何も決まっていなくてもです。(本当に決まっている場合もあります。)
実は物件の囲い込みは、大手・中小関わらず一部の不動産会社でいまだに行われています。
ではなぜ行われるかというと、利益を多く得ることができる両手取引を狙っているからの一言に尽きます。
ちなみに不動産会社が売主もしくは買主のいづれを仲介して、片方から仲介手数料をもらう取引のことを片手取引と言います。
両手取引とは
両手取引とは不動産会社が売主と買主の仲介をすることで、両者から仲介手数料をもらう取引のことです。
仲介手数料は売買価格に応じて下記の手数料が定められています。
売買価格(税別) | 仲介手数料の上限 |
200万円以下 | 売買価格の5%+消費税 ※1 |
200万円超400万円以下 | 売買価格の4%+2万円+消費税 ※1 |
400万円超 | 売買価格の3%+6万円+消費税 |
※1 2018年の法令改正で、400万円以下の低廉な空家等の土地または建物を売る場合は、仲介手数料の上限額が18万円+消費税となる特例が施行されました。
当然、仲介手数料の高い両手取引を多くの不動産会社は狙っています。
もちろん専任媒介契約をしたのであれば、他の不動産会社からの問い合わせや申込に対して情報をオープンにしなければいけません。
しかし故意に物件情報を開示しない不動産会社が一部存在しています。
ちなみにアメリカでは両手取引は禁止されています。
高く売りたい売主と安く買いたい買主とではお互いの利益が相反しており、知識や経験も足りない双方のどちらかに不利益が傾く可能性があるからです。
2. 物件の囲い込みをされると、どんな影響があるか
不動産の囲い込みが行われると他社で契約できたチャンスを逃すことになり、販売活動が長期化します。
長期化することにより余計な広告費が発生したり、不動産会社に理由を付けられてズルズルと売買価格の値下げを求められることになり、この不利益を受けるのは全て売主です。
不動産会社としては売買価格を値下げすることによって仲介手数料も下がりますが、片手取引になるよりかは全然マシと考えています。
3. 物件の囲い込みの被害に合わないためには
信頼できる不動産会社に依頼できれば問題ありませんが、正直同じ業界にいても他社の実態はわからないものです。
実態がわかりにくく、かつ利益を生み出しやすい構造になっているため、未だにこの悪習がなくなりません。
ですので、そのような被害に合わないために売主側でできる範囲の対策をご案内致します。
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3-1. 専任媒介を依頼した不動産会社にレインズの「登録証明書」を請求する
専任媒介契約はレインズへの登録が必須ですので登録内容を確認できる「登録証明書」を発行してもらいましょう。
中には専任媒介契約を結んでもレインズに登録しない悪質な不動産会社も存在するからです。
また、「登録証明書」には取引状況という項目があり、下記の3つのうちいづれかが選択されています。
公開中 | 他の不動産会社からも問い合わせを受付している状態 |
書面による購入申込あり | 不動産業者が書面による購入申込みを受けた状態 |
売主都合で一時紹介停止中 | 売却依頼主の事情により一時的に物件を紹介できない状態 |
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構 登録証明書のサンプル
登録証明書の内容は他の不動産会社も自由に確認することができ、取引状況の内容を見れば紹介可能かを判断することができます。
また売主には専用のIDとパスワードが発行されるので、自分の物件の状況を常に確認することが可能です。
もし売主の知らぬ間に「公開中」から「書面による購入申込あり」や「売主都合で一時紹介停止中」に変わっていた場合、不動産の囲い込みが行われている可能性が高いと言えます。
しかし物件の照会をしても担当者と連絡がつかなかったり、更新のし忘れといった抜け道が存在するのも事実です。
3-2. 物件の囲い込みの実態がないか念を押して確認する
シンプルに不動産の囲い込みの実態がないか確認することです。
もちろん、素直に認める会社はありませんがクギを打つことで一定の抑止効果につながります。
不動産会社としてもトラブルは避けたいと思うからです。
ただし、囲い込みをしていない真面目な不動産会社からすると失礼な質問に当たるので、言い方には十分注意しましょう。
3-3. 一般媒介契約を選択する
一般媒介契約を選択して複数の不動産会社を競わせる方法もあります。
ただし、不動産の囲い囲みを避けるため、一般媒介契約を選択し、売買を成立させる本来の目的を達成できなけば意味がありません。
【一般媒介契約のメリットとデメリットを宅建士が解説】どんな人におすすめか?
4. 物件の囲い込みがされていないか確認する裏技
正直、あまりおすすめの方法ではないですが、不動産の囲い込みがされていないか確認する裏技があります。
それは、売主自身もしくは知人に頼んで架空の不動産会社になりすまし、自分の物件が紹介可能かを問い合わせすることです。
申込もなく、紹介停止中でも無いにも関わらず紹介不可と案内された場合、ほぼクロで間違い無いでしょう。
シロだった場合、バレると信頼関係に関わってくるので細心の注意が必要です。
5. まとめ
以上、物件の囲い込みをされるとどんな影響があるか、また被害に合わないための対処法について解説致しました。
被害にあうと売却活動は長期化し、結果的に値下げした価格で売却することになる可能性が高いです。
売却活動を有利に進めるためには、売主側も被害にあわないための知識を身につける必要があります。
また、大手企業だから安心と安易に考えず、複数社を比較して信頼できる不動産会社に依頼をすると良いでしょう。
最後までご覧頂き、ありがとうございました。