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不動産売買において多いトラブルの一つに「契約解除に伴う手付金」があります。
手付金には複数の種類があり、正しく理解していないとトラブルに発展する可能性があるので要注意です。
手付金とは売買契約時に買主から売主に支払う代金のことで、「証約手付」「解約手付」「違約手付」の3つの種類がある。 |
1. 手付金とは?
手付金とは「手付金とは売買契約時に買主から売主に支払う代金のこと」のことを言います。
支払われた手付金は売買代金の一部に充当され、残りの代金は決済時に支払うのが一般的です。
また手付金には「証約手付」「解約手付」「違約手付」の3つの種類があり、契約の当事者間で自由に決めることができます。
2. 手付金の3つの種類
2-1. 証約手付
証約手付とは売買契約の成立の証するための買主から売主に支払われる手付金のことです。
証約手付が支払われるということは買主の購入する意思表示と見なすことができるため、売主や不動産会社の立場からすると安心して売買手続きを進めることができます。
また売主が証約手付を受領するということは、売買手続きを進める意思があると確認できるので買主にとっても安心材料の一つと言えます
2-2. 解約手付
解約手付とは一定期間中、売主・買主のどちらかが一方的に売買契約を解除できる手付金のことです。
条件として買主は手付金を放棄して、あるいは売主は手付金の倍額を支払うことで売買契約を解除することができます。
理由は問いませんが、相手方が契約の履行に着手する前に限られます。
契約の履行とは具体的に下記のような行為を指します。
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Point
売主が一般の個人である売買契約の場合は、契約締結から一定の期間内について解約が認められる「手付解除期日」を定めるケースが一般的です。
「手付解除期日」は契約締結から、1ヶ月後に設定される場合が多く、これより短い期間で設定されている場合は交渉の余地があります。
ちなみに売主が宅建業者の場合は、売買契約書で手付解除日を設けたとしても無効となり、売主業者が履行に着手していない限りは買主から手付解除を申し出ることが可能です。
2-3. 違約手付
違約手付とは買主または売主のいづれかが契約義務を果たさなかった時に備えて、予め違約金を定めておく手付金のことです。
具体的には買主違約のときは手付金が違約金として没収され、また売主違約のときは手付金の倍額を違約金として支払わなければならないという特性があります。
そして違約手付が交付されると、契約解除による損害の大小にかかわらず予定した違約金が損害金となります。
このように契約の時点で違約手付を定めておくことで、契約違反が発生した際の紛争を短縮でき、また相手方に契約の履行を意識付けさせるメリットがあります。
3. 手付金の相場は?
手付金の相場は売買代金の5〜10%位が一般的です。
極端に少ないと手付金としての役割が薄れてしまうため上記の相場が目安ですが、手持ち金が少ない場合などは相談自体は可能です。
実際手付金の額はケースバイケースで、人気物件や売主によっては相場を超える額が必要な場合もあります。
また売主が不動産業者の場合は、売買代金の20%以内までが上限と法律上定められています。
ただし手付金の額によっては、保全措置が必要となります。
4. 手付金の保全措置とは?
保全措置とは売買契約後、不動産会社の倒産などにより支払った手付金が返還されないリスクに備えることです。
具体的には銀行か保険会社、または保証協会との間で保証の契約を締結する必要があります。
ただし全ての手付金に保全措置が必要なわけではなく、下記の条件と売主が不動産会社で買主が個人の場合に限ります。
手付金の額 | 保全措置の内容 | |
未完成物件の場合 | 手付金が売買代金の10%、または1,000万円超の場合 | 「銀行等による保証委託契約」と「保険事業者による保証保険契約のどちらか |
完成物件の場合 | 手付金が売買代金の5%、または1,000万円超の場合 | 「銀行等による保証委託契約」と「保険事業者による保証保険契約」、「保証協会等による手付金等寄託契約、及び質権設定契約」のいづれか |
また対象物件ついて、買主への所有権移転の登記がされたとき、買主が所有権の登記をしたときは手付金の保存措置は不要とされています。
Point
売主が不動産会社の場合は、手付金が返還されないリスクを避けるため上記の水準以上で設定することをおすすめします。
また万が一の時に慌てないために、どのタイプの保全措置を講じているか確認しておきましょう。
5. 手付金を支払うタイミングは?
手付金を支払うタイミングは売買契約と同時に現金で支払うことが一般的です。
しかし数百万円の額になることもあるので事前に振込みをするケースも珍しくありません。
基本的には打ち合わせで決めれた期日までに対応すれば問題ありませんが、万が一支払いが遅れると手付金による拘束力がない状態のため、トラブルのもとになりやすいので要注意です。
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6. 手付金トラブル例
6-1. 解約手付トラブル
不動産会社を通して個人の売主Aさんと土地の売買契約を締結し、同時に解約手付の支払いも済ませた買主Bさん。売買契約から2週間後に住宅メーカーと建物請負契約を締結したが、その1週間後に売主Aさんから手付金の倍額支払うことことで売買契約を解除したいと申し出があった。売買契約書には手付解除期日が売買契約日から1ヶ月後と記載されている。Aさんは手付解除期日内であることを理由に契約の解除を要求しているがBさんはこれを拒むことはできるか。 |
結論としてはBさんは契約の解除を拒むことができません。
理由は手付解除期日が売買契約日から1ヶ月後と定めらており、解除の申し出時点では期日内だからです。
買主Bさんは住宅メーカーと建物請負契約を締結しているため、契約の履行に着手した状態と言えそうですが手付解除期日内である以上、売主Aさんの要求が優先されます。
買主Bさんは手付金の倍額を受領し、契約の解除を受け入れるしかありません。
6-2. 売主が不動産業者の場合のトラブル
不動産会社の売主C社との間で2,500万円の建売住宅(完成済み)の売買契約を締結し、同時に100万円の解約手付の支払いを済ませた買主Dさん。その2週間後に住宅ローンの融資承認も取得している。しかし売買契約から3週間後に他に条件の良い物件が見つかったため、売主C社に対して手付金を放棄する代わりに売買契約を解除する要望を伝えた。しかし売買契約書には売買契約から2週間後とする手付解除期日が設定されており、既に期日は過ぎている。売主C社は、手付解除期日が過ぎていることと、融資承認の取得が履行の着手に該当することを理由に解除を認めない。買主Dさんは解約手付を放棄して、売買契約を解除することはできるか。 |
結論としてはDさんは売買契約の解除ができます。
理由は2つあり、一つは売主が不動産業者の場合は手付解除日を設定することは買主に不利な特約として無効とされているからです。
二つ目は住宅ローンの融資承認はあくまで買主Dさんの行為であるため、売主C社の契約の履行に着手する行為とは言えないからです。
この場合、解約手付の100万円を放棄して、売買契約の解除をすることが認められます。
ちなみに手付金の100万円については売買代金の5%内であるため、保全措置を講じる必要はありません。
7. 手付金トラブルにあわないためには
手付金トラブルに遭わないためには、正しく手付金について理解をすることが大切です。
特に下記の点は、売買契約前に必ず確認し、納得した上で契約するようにしましょう。
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8. まとめ
以上、手付金の種類やトラブル例などについて詳しく解説させて頂きました。
手付金についてしっかり理解をしていないと、いざトラブルが発生した時に対応が後手に回ってしまう可能性が高いです。
不動産は高額な買い物なので、トラブルが発生すると大きな損害につながるので注意しましょう。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。