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不動産売買おいて多いトラブルの一つに、引渡し後の契約(不具合や不良の発覚)トラブルが挙げられます。具体的には雨漏りやシロアリ被害、設備不良などのことです。
基本的に法律で買主は守られていますが、法律や不動産に詳しくない弱みにつけ込み泣き寝入りしないためにも、一定の知識は備えておくべきです。
契約不適合責任は買主を保護するために5つの権利が定められており、売主の免責契約も有効となります。 |
1. 契約不適合責任とは?
契約不適合責任とは、引き渡された目的物(住宅や土地など)の品質や種類、数量などが契約の内容に適合していない場合に、買主が売主に対して請求できる権利や売主の責任範囲を定めた法律です。
つまり契約書と異なる場合または、定められていない内容については基本的に売主が責任を負う必要があるということになります。
従来は「瑕疵担保責任」と呼ばれる法律で対応していましたが、2020年4月から新たに「契約不適合責任」が施行され買主をより手厚く保護し、シンプルな内容に改正されました。
2. 契約不適合責任における買主の権利
2-1. 追完請求
追完請求とは売買において目的物の引き渡し後、その品質や種類、数量が契約の内容に適合しないときに買主が売主に対して目的物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡しを求めることです。
たとえば購入した中古物件が引き渡し後すぐに雨漏れ被害にあった場合、買主は売主に対して雨漏れ箇所の修補や相応の費用請求が可能となります。
しかし契約書に雨漏れ被害がある旨の記載があったり、売主が知っていて購入した場合は追完請求ができません。他にも築年数が相当経っていて劣化が容易に判断できる場合も請求できない場合があります。
また雨漏りのない代替え物件を請求することも可能ですが、修補が相応の負担と判断できる場合、売主は買主から追完された請求内容とは異なる修補で追完ができます。
2-2. 代金減額請求
代金減額請求とは売主に対し、上記の追完請求を行ってもその対応をしない場合に次の一手となる手段のことです。まずは買主が相当の期間を定めて追完を実行するよう売主に催促し、その期間内に追完内容が行われない場合に代金減額請求が認められています。
上記の引き渡し後の雨漏れ被害で例えると、売主に相当の期間を定めて修補の請求をしても対応がなされない場合に、代金の減額請求ができます。
ただし買主に責任がある場合は代金減額請求を行えません。たとえば雨漏りがあるのを知っていて、契約書にもその旨の記載がある場合などです。
2-3. 催告解除
催告解除は買主が追完請求を行ったにもかかわらず、売主が追完を実行しない場合に、催告をした上で契約を解除できる権利のことです。
住宅の場合は構造などに致命的な欠陥があると利用が困難な場合があるので、修補や減額請求では買主が納得できない場合もあります。そのような場合に契約を解除できることが認められています。
通常契約を解除すると違約金が発生しますが、催告解除の場合は元々の契約がなかったことになるので違約金は発生しません。もちろん支払った代金については無条件で返還されます。
2-4. 無催告解除
無催告解除は契約不適合により契約の目的が達成できない場合に利用できる買主の権利です。催告解除とは異なり、売主に催告することなく直ちに契約を解除できます。
ただし契約の目的が達成できないことが条件ですので、少々の不具合などを理由に契約解除できるわけではありません。
2-5. 損害賠償請求
損害賠償は売主に過失責任があった場合に買主が請求できる権利のことです。
過失とはミスや故意に情報を隠したりすることで、過失がなければ損害賠償を請求することはできません。従来の瑕疵担保責任では過失の有無にかかわらず損害賠償が認めたれていたため、混同しないように注意が必要です。
一見グレードダウンの印象がありますが、契約適合責任では損害賠償の範囲を「信頼利益」だけでなく「履行利益」まで含めているため売主の責任が格段に増したと言えます。
信頼利益 | 契約が不成立・無効になった場合に、それを有効であると信じたことによって被った損害のこと(ex.登記費用など) |
履行利益 | 契約が履行されたならば債権者が得られたであろう利益を失った損害のこと(ex.転売利益など) |
3. 契約不適合責任を追求できる期間
買主が契約不適合責任を追求できる期間は新民法第566条で下記のように規定されています。
売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
つまり契約不適合を知ってから一年以内に売主に通知すれば良く、通知方法に定めはありません。
ポイントは一年以内に通知すれば良い点で、その時点では追完請求などの権利行使までは求められていないことです。また売主が建物の欠陥などを故意に隠した場合などは上記の期間制限は適用されないとしています。
しかし通知しただけで上記の権利が自動的に発動するわけでないので、下記期間中に権利行使をする必要があります。
権利を行使することができることを知った時からは5年間、権利を行使することができる時からは10年間行使しないときは、契約不適合責任における買主の権利は時効により消滅することになります。 |
4. 契約不適合責任における免責について
契約不適合責任においても免責契約は有効となります。
免責契約とは契約当事者が合意すれば、一部もしくは全部の責任を免除できる「任意規定」のことです。
たとえば経年劣化が容易に想像できる古い建物の契約において、売主が契約不適合責任を一切負わないという免責契約は認められる場合があります。また給湯器やエアコンなどの寿命が10年前後の設備機器についても免責になるケースが一般的です。
理由は全てに契約不適合責任を認めてしまうと、円滑な市場取引が阻害されてしまうからです。
ただし免責を定める場合は、契約書にその内容を記載しておかなければなりません。
また一方で「強行規定」と呼ばれる法律が存在するため、買主とってに不利となる特約は無効とされています。
5. 契約不適合責任のチェックポイント
5-1. 契約書の内容をしっかり確認する
契約不適合責任は契約書に記載があるかないかが重要になります。基本的には口頭でも契約は成立しますが、言った言わないのトラブルを避けるためにもしっかり契約書に明記しておくべきです。
特に契約不適合責任の免責についてはしっかり把握しておきましょう。
売主としてもなるべく負担は避けたいと考えているため、一方的に契約不適合責任を押し付けると契約自体が白紙となりかねません。
お互い歩み寄りの姿勢が大切で、場合によっては免責を認める代わりに価格交渉を行うなど、柔軟に対応することも必要です。
5-2. ホームインスペクションを実施し、建物の状態を把握しておく
ホームインスペクションとは住宅診断のことで、住宅診断士が建物の基礎・躯体・外壁・屋根などの劣化状況や欠陥の有無を調査して、改修工事の箇所や時期を報告書にまとめ提出してくれます。
建物の状況を調査した物件であれば、買主としては安心できますし、契約不適合責任の範囲を決める上でも重要な判断材料となります。
もしホームインスペクションが未実施であれば、後々トラブルにならないためにも不動産会社に相談しましょう。
5-3. 信頼できる不動産会社(担当者)か見極める
不動産売買を成功させるためには、不動産会社(担当者)によって決まると言っても過言ではありません。
相反する要望を持っている買主と売主との間に入り、お互いが納得する着地点を見つける役割があるため、交渉力や知識がある不動産会社が見極めましょう。
売主ファーストだったり、自社の利益のために強引な営業を行う不動産会社も存在するので要注意です。
6. まとめ
以上、契約不適合責任について詳しく解説いたしました。
契約不適合責任は従来の瑕疵担保責任と比べよりシンプルに、さらに買主を手厚く保護するため5つの権利を請求できるよう改正されました。
ただし売主の免責を定めることも有効なので、免責の範囲については契約書をしっかり確認しましょう。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。