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近年、住宅ローンの借入年齢の高齢化や老後の貯蓄高の減少などによる将来の不安からか、注目を集めているリースバック。
不動産売買とは異なり、リースバックは所有の自宅を売却し資金を得た後も、そのまま賃貸として自宅に住み続けられる不動産取引のことをいいます。
一見メリットしかなさそうなリースバックですが、実はデメリットも多く存在するため注意が必要です。知識を持たずに契約を進めてしまうと、取り返しのつかないことになりかねません。
そこでこの記事では、リースバックの仕組み〜デメリット・メリットなどについて詳しく解説していきます。
Contents |
リースバックの仕組み
実はリースバックは日本では1960年代から始まったと言われていますが、まだまだ馴染みが少ない方も多いでしょう。
リースバックの正式名称は「セール&リースバック」といい、売却(セール)と賃貸(リースバック)が一緒になった不動産取引のことです。
仕組みは買主&貸主になるリースバック業者が対象の不動産の査定を行い、提示された価格と家賃に売主が合意すれば、売却代金が支払われ賃貸借契約がスタートします。
つまり自宅を売却してまとまった資金を確保しつつも、後は家賃を支払えば同じ場所に住み続けることができるということです。
一般的には不動産売買を選ぶ方のほうが多いですが、自宅の売却が決まったら新たな住まいに引っ越さなければなりません。そのような物理的な負担がかからないのがリースバックの特徴です。
では具体的にどのようなタイミングでリースバックを検討するのでしょうか。
リースバックを検討するタイミング
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住宅ローンを完済したい
定年後は住宅ローンから解放され、安心した生活を送りたいと思う方は多いでしょう。自宅を売却しローンを返済することもできますが、次の住まい先を探すのも大変です。
その点リースバックは売却価格によっては住宅ローンを完済し、その後は賃貸で住み続けることができます。
老後の資金を確保したい
子供が独立しやっと手が離れたものの、次にやってくるのが自分たちの老後のことです。老後資金2,000万円問題が話題になりましたが、介護費や医療費など将来に不安を感じている方は少なくありません。
リースバックはまとまったお金を確保できるので、老後資金の悩みを解決できる可能性があります。
相続資産の整理
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相続に悩みをつきものです。不動産を現金化して相続に備えることもできるので残された方達のためにもなります。
リースバックのデメリット
ここまである程度リースバックについては理解できたと思うので、次はデメリットとメリットについて見ていきましょう。
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売却価格が相場より安い傾向がある
実はリースバックの不動産の売却価格は、利回りによって決定されます。リースバック業者もボランティアではないので、買取価格と家賃収入を考慮し、どれだけ利益が見込めるかを考えるのは当然のことといえます。
一般的に利回りを重視すると売却価格が相場より低くなる傾向があります。
相場より家賃が高くなる場合がある
家賃は建物の立地、築年数なども考慮されますが、売却価格によっては相場より高い家賃設定になることも珍しくありません。
また売却価格の10%を年間賃料と定める業者も存在します。例えば売却価格が2,000万円であれば、年間賃料200万円(月々約16.7万円)ということになります。
逆に賃料を安く抑えるためには売却価格を安く設定しなければならず、どちらにしてもリースバック業者にしかメリットはありません。
契約期間に定めがある場合がある
リースバックは賃貸期間に定めがある定期借家契約が一般的です。契約期間満了の際は、貸主と借主の合意があれば再契約することは可能ですが、万が一貸主の合意が得られないと契約期間満了となるため退去しなければなりません。
場合によっては定期借家契約の期間を長く設定したり、期間の定めがない普通借家契約が可能な業者を選ぶと良いでしょう。
買い戻す際は、リースバック時の売買価格より高くなりがち
リースバックの契約には買い戻しの条件を設定することが可能です。買い戻しの条件には「買い戻し予約」と「買い戻し特約」とがあり、以下の通り内容が異なり「買い戻し予約」の場合、リースバック時に売買した価格より高くなる傾向があります。
買い戻し予約の要件 | 買い戻し特約の要件 | |
契約時期 | 定めなし | 売買契約と同時 |
買戻し期限 | 制限なし | 最長10年(※1) |
買戻し価格 | 売買価格に10〜30%プラス | 売買価格+契約費用の合計を超えてはいけない |
(※1) 契約の際に買い戻し期限について定めがない場合は5年が期限となる
また、「買い戻し特約」で契約したにもかかわらず、期間内に買い戻しを実行(費用の支払い)できなと契約自体が解除となり、退去しなければならない場合があるので注意しましょう。
他にも「買い戻し予約」と「買い戻し特約」は法的な拘束力に違いがあるため、第三者に対して行使できる権利も異なります。
たとえば買主であるリースバック業者が勝手に不動産を売却したとしても、それを取得した第三者に対抗できるかは以下表の通りです。
買い戻し予約 | 買い戻し特約 | |
対抗要件 | 第三者に対抗できない | 第三者に対抗できる(※2) |
(※2)ただし買い戻し特約の要件を満たしておく必要がある
買い戻し予約が向いている人
決まった期間で確実に資金を用意できるかが不安な方
買い戻し特約が向いている人
買戻しが決定していて、決まった期間までに確実に資金を用意できる方
リースバックのトラブル事例
近年、注目を集めているリースバックですが、下記のようなトラブルも起きているのも事実です。
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詳細内容やトラブルに発展しないためのポイントは、以下の記事で解説しているので是非ご覧下さい。
リースバックのトラブル事例7選!【後悔しないためのポイントも解説】
リースバックのメリット
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まとまったお金を短期間で調達できる
リースバックは買主である業者がすでに決まっているため、条件さえ整えば短期間でまとまったお金が手に入ります。
一方、不動産売却では買主の募集から決済までに数ヶ月あるいは1年以上かかることもあり、またいつ契約が決まるか読みづらい面があります。
不動産所有のリスクがなくなる
不動産の所有リスクで考えられるのが、地震などによる災害被害や資産価値の下落があります。万が一このような所有リスクが起こったとしても、リスクを負うのは所有者であるリースバック業者です。
不動産所有にかかる税金などがかからない
不動産を所有すると固定資産税や建物の修繕費、火災保険などが発生します。しかしリースバックであれば、これらの費用を負担するのは基本的にはリースバック業者です。
売主は家賃だけをリースバック業者に支払えば良いので手間もそれほどかかりません。
ただし、契約条件によっては修繕費を負担しなければならないケースもあるので、契約書は必ず確認しましょう。
実際は固定資産税や建物の修繕費、火災保険の費用を加味して家賃が決まるので、実質的に自分で払っていることにあまり変わりありません。
まとめ
以上、リースバックの仕組み〜デメリット・メリットなどについて詳しく解説致しました。
リースバックの仕組み |
買主&貸主になるリースバック業者が対象の不動産の査定を行い、提示された価格と家賃に売主が合意すれば、売却代金が支払われ賃貸借契約がスタートする |
リースバックのデメリット | リースバックのメリット |
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この記事を読んだ方がリースバックについて理解を深められたのであれば嬉しく思います。最後までご覧頂き、ありがとうございました。